外国人技能実習制度の背景
人手不足が深刻な業界の対策として、「外国人技能実習制度」が注目されています。どんな業界でこの制度が利用出来て、外国人受け入れの為の費用はいくらかかるのか、調査してみたいと思います。
2016年11月、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)が公布されて、2017年11月に施行されました。技能実習制度は、従来より「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年「入管法」)とその省令を根拠法令として実施されてきましたが、今般、技能実習制度の見直しに伴い、この技能実習法で規定されることになりました。
技能実習法に基づく新たな外国人技能実習制度では、技能実習の適正な実施や技能実習生の保護の観点から、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制等が新たに導入された一方、優良な監理団体・実習実施者に対しては実習期間の延長や受入れ人数枠の拡大などの制度の拡充も図られています。
外国人技能実習生を受け入れるには、「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方法があります。ちなみに2016年末時点では「企業単独型」が3.6%、「団体監理型」が96.4%の利用となっています。
「企業単独型」:日本の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方法のこと。
「団体監理型」:事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方法のこと。
技能実習生は入国後に、日本語教育や技能実習生の法的保護に必要な知識等についての講習を受けた後、日本の企業との雇用関係の下で、実践的な技能等の修得を図ります。
どれだけ人材不足な企業でも、外国人技能実習生は無制限に受け入れられるものではありません。企業の社員数によって受け入れ人数の上限は制限されています。
受入れ企業の常勤職員数 | 1年間で受入れ可能な技能実習生の人数 |
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301人以上 | 常勤職員の20分の1 |
201人以上300人以下 | 15人以内 |
101人以上200人以下 | 10人以内 |
51人以上100人以下 | 6人以内 |
50人以下 | 3人以内 |
外国人技能実習生の受け入れの出来る業界
(1) 機械・金属関係(15職種27作業)
職種名 | 作業名 |
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鋳造 | 鋳鉄鋳物鋳造作業 |
非鉄金属鋳物鋳造作業 | |
鍛造 | ハンマ型鍛造作業 |
プレス型鍛造作業 | |
ダイカスト | ホットチャンバダイカスト作業 |
コールドチャンバダイカスト作業 | |
機械加工 | 旋盤作業 |
フライス盤作業 | |
金属プレス加工 | 金属プレス作業 |
鉄工 | 構造物鉄工作業 |
工場板金 | 機械板金作業 |
めっき | 電気めっき作業 |
溶融亜鉛めっき作業 | |
アルミニウム陽極酸化処理 | 陽極酸化処理作業 |
仕上げ | 治工具仕上げ作業 |
金型仕上げ作業 | |
機械組立て仕上げ作業 | |
機械検査 | 機械検査作業 |
機械保全 | 機械系保全作業 |
電子機器組立て | 電子機器組立て作業 |
電気機器組立て | 回転電気組立て作業 |
変圧器組立て作業 | |
配電盤・制御盤組立て作業 | |
開閉制御器具組立て作業 | |
回転電機巻線製作作業 | |
プリント配線板製造 | プリント配線板設計作業 |
プリント配線板製造作業 |
(2) 建設関係(21職種31作業)
職種名 | 作業名 |
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さく井 | パーカッション式さく井工事作業 |
ロータリー式さく井工事作業 | |
建築板金 | ダクト板金作業 |
冷凍空気調和機器施工 | 冷凍空気調和機器施工作業 |
建具製作 | 木製建具手加工作業 |
建築大工 | 大工工事作業 |
型枠施工 | 型枠工事作業 |
鉄筋施工 | 鉄筋組立て作業 |
とび | とび作業 |
石材施工 | 石材加工作業 |
石張り作業 | |
タイル張り | タイル張り作業 |
かわらぶき | かわらぶき作業 |
左官 | 左官作業 |
配管 | 建築配管作業 |
プラント配管作業 | |
熱絶縁施工 | 保温保冷工事作業 |
内装仕上げ施工 | プラスチック系床仕上げ工事作業 |
カーペット系床仕上げ工事作業 | |
鋼製下地工事作業 | |
ボード仕上げ工事作業 | |
カーテン工事作業 | |
サッシ施工 | ビル用サッシ施工作業 |
防水施工 | シーリング防水工事作業 |
コンクリート圧送施工 | コンクリート圧送工事作業 |
ウェルポイント施工 | ウェルポイント工事作業 |
表装 | 壁装作業 |
建設機械施工 | 押土・整地作業 |
積込み作業 | |
掘削作業 | |
締固め作業 |
(3) 農業関係(2職種6作業)
職種名 | 作業名 |
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耕種農業(◎) | 施設園芸 |
畑作・野菜 | |
果樹 | |
畜産農業(◎) | 養豚 |
養鶏 | |
酪農 |
(4) 食品製造関係(9職種14作業)
職種名 | 作業名 |
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缶詰巻締(◎) | 缶詰巻締 |
食鳥処理加工業(◎) | 食鳥処理加工作業 |
加熱性水産加工食品製造業(◎) | 節類製造 |
加熱乾製品製造 | |
調味加工製造 | |
くん製品製造 | |
非加熱性水産加工食品製造業(◎) | 塩蔵品製造 |
乾製品製造 | |
発酵食品製造 | |
水産練り製品製造 | かまぼこ製品製造作業 |
牛豚食肉処理加工業(◎) | 牛豚部分肉製造作業 |
ハム・ソーセージ・ベーコン製造 | ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業 |
パン製造 | パン製造作業 |
惣菜製造業(◎) | 惣菜加工作業 |
(5) その他(9職種19作業)
職種名 | 作業名 |
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家具製作 | 家具手加工作業 |
印刷 | オフセット印刷作業 |
製本 | 製本作業 |
プラスチック成形 | 圧縮成形作業 |
射出成形作業 | |
インフレーション成形作業 | |
ブロー成形作業 | |
強化プラスチック成形 | 手積み積層成形作業 |
塗装 | 建築塗装作業 |
金属塗装作業 | |
鋼橋塗装作業 | |
噴霧塗装作業 | |
溶接(◎) | 手溶接 |
半自動溶接 | |
工業包装 | 工業包装作業 |
紙器・段ボール箱製造 | 印刷箱打抜き作業 |
印刷箱製箱作業 | |
貼箱製造作業 | |
段ボール箱製造作業 |
外国人技能実習生の受け入れにかかる費用
外国人技能実習制度の実習生の受け入れにかかる費用は、大きく分けて10ブロックに分類されます。ここでは、これらの価格の根拠について説明します。
1 監理団体(協同組合、財団等)への加入費用
①監理団体入会金 1社 ¥100,000 ②監理団体年会費 1社 ¥80,000 ★監理団体に支払う費用となります。
2 人選渡航費用
①渡航費用 御社実費 ②宿泊交通費用 御社実費 ③飲食費用 御社実費
3 人選後 事前必要費用
①在留資格認定申請書作成費用 1名 ¥22,000 ②JITCO入国管理局取次費 1社 ¥5,657 ③在留資格認定証明書代引費用 1社 ¥2,000 ④各国書類送付費(送出し国により変動)1社 ¥1,000 ⑤送出し機関事前教育費(送出し機関により変動)1名 ¥33,000 ⑥JITCO比例年会費(資本金により変動)1社 ¥50,000
4 入国直前 必要費用(入国決定後)
①外国人労働者保険(加入者の年齢により変動)1名¥26,000 ②入国渡航費用(実費変動) 御社実費1名¥100,000 ③国内交通費(出迎え等) 1名 ¥10,000 ④入国後講習費用 1名 ¥81,000 ⑤教材費1名 ¥5,000
⑥国内交通費用(企業配属・実費変動)1名¥10,000 ⑦実習生講習手当て 1名 ¥60,000 ⑧健康診断費用(雇い入れ時健康診断)1名¥10,000
5 実習1 期間中の費用(入国から12ヶ月)
①監理団体の管理費 1名¥50,000 ②送出し機関管理費 1名¥10,000 単月小計 ¥60,000 ★監理団体の管理費、送出し機関の管理費は、それぞれの運営費に充てられています。管理費については、値下げをおこなって営業活動的な行為を行っている団体も存在していますが、当制度では営業行為は禁止されています。団体の既存会員向けとされています。価格メリットで安価な労働力を調達するような思想での営業行為を行う団体や組織が、行政からの継続的な理解や支援が得られるとは思えません。管理費については、入国管理局に開示されるので適正な価格でないと疑義が生じる事となるそうです
6 実習2 移行時費用(適時)
①技能検定試験料(地域・職種により変動あり)1名¥21,000 ②在留資格変更・更新申請書類作成費(2回分)1名¥21,600 ③在留資格変更・更新収入印紙代(2回分) 1名¥11,314 ④入国管理局申請取次ぎ費(2回分) 1社 ¥8,000 ⑤JITCO比例年会費 1社¥50,000
7 実習3A 2年目~3年目までの費用負担(12月間)
①監理団体の管理費 1名¥50,000 ②送出し機関管理費 1名¥10,000 単月小計¥60,000
8 実習3B 2年目~3年目までの費用負担(12月間)
①監理団体の管理費 1名¥50,000 ②送出し機関管理費 1名¥10,000 単月小計¥60,000
9 実習生の宿舎について
①家賃 実習生負担 ②光熱費 実習生負担 ③火災保険 実習生負担
10 実習生の給与について
会社規定によるが、給与については、最低賃金相当になることが通常のようです。しかし、現在では、本当に職人として仕事ができる人材を実習生として受け入れて、日本人以上の待遇で活躍するような人材も多数来日しているとのようです。給与の部分では、グローバルな争奪戦の中にいる状況ですので、より戦略的な設定を求められていくことになりそうです。